綺麗な記憶

昼下がり

カーテンから差し込む傾き始めた太陽

お腹には薄手のブランケットが一枚

 

 

静寂

 

 

 

目を閉じると

色が見えた

朱色のような橙のような

 

ほのかに温かい

 

部屋に夕焼けが差し込む

 

シャボン玉の音楽が

17時を告げた

 

 

 

寂しい夢を見た

 

涙が流れた

 

瞬く間に

十数年の時が

流れていく

 

 

母親の手を離れた

小学生のころ

 

友人との青春が光る

中学時代

 

劣等感を抱き続けた

高校時代

 

美しい時こそ

瞼を下した途端

幻に変わってしまう

 

 

振り返れば

十人十色の私がいて

泣きたくなって

 

私はなに?

本当の私は?

 

真っ白な部屋で

私は泣き叫ぶように

過去の彼女たちに問うた

 

彼女はただ

眩しく微笑むだけでった

 

 

灰をかぶり

薄汚れた私を前にして

 

 

大きな夢は絶たれた

絶望は飽きるほど経験した

裏切りは人生のスパイスだと知った

絶対はないと悟った

大人は汚いと確信した

信じられるものはすべて失った

 

 

私にあるものは

穢れをなした己の体と

消えかかる幼いころの儚い光

 

 

恐れはない

前進するだけ

振り返ればやはり

屈託のない笑顔があった

 

唇が動く

 

あなたにしかいない

 

 

溢れ出たものは

体内へ取り込むことは

不可能であり

 

溢れたら

溢れたまま

 

外へ排出するものは

穢れたもの

 

 

もう一度

光れるのか

こんな体でも

光れるのか

 

 

大丈夫

 

 

彼女が言うなら・・・・・

 

 

 

日は傾き、

月が満ち、

暗闇に包まれた街を

優しく照らす

 

 

 

 

静寂

 

 

 

瞼を下すと

 

藍色が満ちる