トラウマを紐解く

 

 

私の好きな人がそう言った

トラウマには原因がある

それを紐解いてあげることで

トラウマが軽減されるとか

 

 

 

私の場合

トラウマというより

とても懐かしい記憶が蘇った

 

3年前の春 

着慣れない制服に包まれて

その中で

初めて合わせる顔 

茶色のふわふわとした髪に

切れた瞳

そう、俗に言う

「ひとめぼれ」

というものに出会ってしまった。

 

彼との出会いから

とあるふたつの出会いが生まれた

どちらも私にはかけがえのない出会いだ

 

けれど1年ほどで

彼との赤い糸は

結ばれることなく

切れてしまった

 

 

浴槽にて。

 

私はその頃の記憶を紐解いていた

必死に彼の送ったテキストと

にらめっこした日

前を行く背中を見つめ続けていた日

遠くから彼のことをずっと眺めていた日

初めて話しかけられた日

それでも結局

一言二言しか話せなかったこと

当時の私は全然可愛くなかったこと

私の送るテキストは酷くぎこちなかったこと

私の友達とは楽しそうに連絡を

取っていたこと

彼が好きな漫画を好きになったこと

それでもやっぱり

話しかけられなかったこと

切りたての髪を自慢げに

振舞っていたけれど

私の髪の毛はボサボサだったこと

その事に私自身が理解してなかったこと

 

 

全て全て

トラウマだった

 

 

今の私なら

上手くやるのかな

 

今の私なら

可愛いんだけどな

 

 

好きの反対は………………

 

 

今日に至るまで

彼のことは頭の片隅の小さな箱に

閉じこもっていて

 

 

今日、その箱をこじ開けたら

眠っていた記憶が

一気に呼び起こされた

 

 

片手で数えるほどしか

人を好きになったことの無い私が

2番目に恋した相手だった

 

 

だけど

やはり

交わした言葉は少なかった

 

 

男性と話すことが苦手になったのは

ここからであろうか

恐らくそうだな

その次の年から

男性に対して大きな恐怖を抱いてしまった

 

 

少しずつ

トラウマを紐解く

 

そして

可愛くなかった頃の私を成仏させ

私の可愛いを更新していく

 

 

この過程

なかなかに嫌いじゃないかもしれない

 

 

彼は…………

とても綺麗な名前だったな。

 

 

そんなことも

不意に思い出してしまった

 

 

 

とっても好きだった。

 

 

 

それならもっと

 

後悔は呪いのように付き纏う

 

でも、当時の私には

その勇気はなかったのだろうな

 

 

 

今はどこで何をしているのだろう

 

 

知らない方がいい

 

 

夢のような恋とは

そういうものかもしれない

 

 

 

冬になったら

君を思い出すのかな……。