知らない笑顔

 

 

 

あなたと会う前日

 

 

全身を綺麗にして

あなたにしか見せないところまで気を使って

いつもよりちょっといいヘアケアをして

体を絞って

 

 

 

 

 

でもふと

もしこの間に私の知らない女の子と

私の知らない女の子に

私の知らない顔をしてたらって思うと

ゾットすることがある

 

 

 

鏡を見る

自分の冴えない顔

情けない体型

努力しても努力しても

限界はここ

 

私より可愛い子なんていっぱいいる

一番なんて言うけど

可愛い子に言い寄られたらその気になる

 

男ってそういう生き物だって

最近周知し始めた

 

 

信じてないわけじゃない

信じすぎて

裏切られるのが怖い

 

 

 

私の知らないあなたがいるのが怖い

私の知らないあなたがいるのが許せない

だけどあなたに嫌われなくない

 

 

 

不安に押しつぶられそうになりながら

誰にも話せずに

また一人

お風呂場から離れられずにいる

動けない

 

 

 

会える前日

うきうきなはずなのに

余計な心配が頭をよぎる

 

 

明日

やっぱ無理なんて言われたら

私どうしたらいいかな

 

 

 

杞憂に終わるであろう心配が

ぐるぐると頭を駆け巡った

 

 

 

体だけでもいい

付き合って間もないとき

そう話したものの

知らない女があなたと話してるのは

死ぬほど気持ち悪い

 

でも

昔の関係に戻るのは嫌だ

 

好きの反対は無関心

 

 

嫌われてる方がまし

都合のいい女だと思われてる方がまし

 

 

 

 

夕方は返ってきていたラインが

夜になった途端途絶えた

 

 

 

 

返事が帰ってこないで1時間がたった

 

 

 

 

 

 

微睡みの中で

彼氏が私が浮気をする夢を見たらしい

 

 

 

 

私が速水もこみち風のイケメンと付き合って

ものすごく楽しそうに笑っていて

妊娠までしていたそうだ

 

 

 

とてもリアルな夢だったらしい

 

 

 

 

 

正夢になるとか

俺みたいなブスより

イケメンで優しい人のほうがいいとか

俺なんかと付き合ってても幸せになれないとか

どうせすぐ飽きちゃうでしょとか

 

 

 

 

 

むしろ私のほうが

私より可愛くて彼に似合う女の子なんて

いっぱいいるし

って思ってたから

 

 

彼がそんなことで悩んでるのが

ちょっと面白おかしかった

 

 

 

 

昨日の通話なんて

自分から電話したいって言ったくせに

もう情緒がやばいからもう切っていい?

なんて…

 

 

いっつもそう

私のことなんてお構いなし

自分だけいい気分になって

私にはごめんね、ごめんねっていうだけ

 

 

 

 

そういうところが

ほんとに嫌いだけど

ほんとに大好き

 

 

 

 

 

男なんて信用できない

そう思ってた私の前に現れて

きっと彼の隣を歩く女の子は

幸せなんだろうな

私は…

私は彼の隣を歩くに等しい人間じゃないな

 

 

でも私のものにしたいな

 

 

 

 

ずーっとそんなことばっか思ってた

 

初めて通話したとき

初めて助手先に乗ったとき

初めて二人でご飯を食べたとき

初めてあなたの部屋に行ったとき

初めてあなたとキスして

あなたと体を重ねたとき

 

 

 

全部全部

夢だったんじゃないかって

これは夢でも見てるんじゃないかって

 

 

 

ずっと憧れで

遠くから眺めてて

近くに来られると脈が飛びそうになって

まともに目すら合わせられなかった私が

 

今「彼のもの」になってる私が

 

なかなか実感できなくて

 

 

 

でも全部幸せで

 

 

 そのくらい

私はあなたが大好きで。

 

 

 

 

もちろん自分の時間が大切になるときだってある

そのとき

あなたにまで気が行かないことだってある

でも

これからも長くそばにいるって

そういうことじゃないかな

 

 

 

 

なにもかも

あなたがはじめてだもん

 

 

 

 

信じてほしい

そう思うよ

 

 

 

 

 

誰よりも好き

 

 

 

可愛くない好き

 

 

昨日まであんなに好き好き言ってたのに

 

急に冷たくなった気がした

 

 

ぷつんと

LINEのやりとりが途切れた

 

 

こんな時ふと

 

他の女がいるんじゃないか、なんて

余計なことを考えて

 

 

なにも頭が働かなくなってしまう

 

 

私しか好きじゃないんじゃなかったの?

 

 

他に女がいるなんて

なんの証拠もないのに

 

冷たくされた途端

他に予定があるって言われた瞬間

 

 

あ…もしかして。

と思う自分がいる

 

 

 

 

めんどくさい女って思われたくなくて

あなたに見合う女になりたくて

 

必死に自分の汚いところを

取り繕ってる

 

 

 

私よりあなたに見合う女はたくさんいるし

私より愛想がよくて可愛い女はいっぱいいる

 

 

そもそも私のことを好きな時点で

なんかちょっとおかしい

 

 

私が人に好かれる要素なんて

そもそも1つもない

 

 

とにかく

こんなことで気分が上がったり下がったりする

自分を操縦するのが

本当にしんどくてめんどくさかった

 

 

 

リモートで行われてる授業は

ほとんど頭に入らないほど

私は、彼のことで頭がいっぱいだった

 

 

 

君が、

ずっと声聞かないとおかしくなるって言うから

いっつも君から言ってくれるから

私から声かけたのに

 

 

そっけない態度が心底気に入らなかった

 

 

 

 

 

私はこんなに好きで、

苦しいくらいなのに

 

 

 

君は

君はきっと

私のことなんてすぐ飽きちゃうよ

 

 

今は私がいないとなんて言うけど

 

 

男の本能だもん

仕方ない

 

 

 

もし私に飽きても

別れたくなっても

私はずっとあなたを待つかもしれない

 

 

 

 

私のほうが

一生好きでいる自信があるから

 

 

愛してるよ。

 

倦怠期。

 

 

 

彼と体を重ねた翌日

私はバイト、彼は友人と買い物…

 

 

疲れたけど疲れたからこそ声を聞きたいと

思ったけれど

彼からのLINEの返事はいつになっても来なかった

 

 

眠たいからもう寝たい

という気持ちと

もしかしたらいつもみたいに

通話できる?と聞いてくるかもという

期待が胸の奥で疼く

 

好きすぎて嫌いになりそう

 

 

私が身勝手でわがままなのも

今までも昨日も全部私のワガママに

笑顔でいいよ、大丈夫だよ、と

答えてくれたのも

全部嫌になる

 

 

彼のせいだ

と思う反面

私、迷惑かけてばっかだ

という思いが影を落とす

 

 

時間21時半を回っていた

私がLINEを送ったのは18時

 

付き合えば返事が遅いとかで

マイナスな感情になるなんて思わなかった

 

 

付き合ったって結局一緒だ

 

私ばかり舞い上がって

 

思いが全然釣り合ってないな、と思う

 

 

 

けれどどうせ

彼から返事がくればどんな内容でも

舞い上がってしまう

 

 

いろいろと釣り合ってない…

 

 

もっと私がしっかりしなきゃ

 

 

 

倦怠期は付き合って3ヶ月

 

 

昨日は付き合って一ヶ月記念日だった

 

 

あと2ヶ月

 

好きだけど怖い

 

 

 

 

まぶたが重くなるなか

彼からの返事を待ち続けた

 

 

 

体温

 

 

 

帰宅した私の体には

まだ彼の体温が残っていた

 

 

彼の匂い、髪質、肩幅、声

覚えられるものは全て覚えた

 

 

今はすべてが愛おしく恋しい

 

 

 

たくさん愛しあえば愛し合うほど

たくさんあなたが足りなくなってくる

 

 

こんなにも大好きで仕方がない

 

 

最近は

好き、もかわいい、も

あまり言ってくれなくなった

 

 

でもそれでも

行動のひとつひとつ

声、表情から

彼が私を大切に思ってくれるのが伝わる

 

 

いつかきっと

もっと冷めきってしまうかもしれない

 

そんな寂しさも抱えながら

 

 

でもとりあえず

今が幸せだからそれでいいと感じる

 

 

あなたの体温が消えないまま

何もない朝を迎えた

寂しさと虚しさを抱きしめて

 

もう一度眠りについた

 

繋いだままで

 

 

 

 

朝、目が覚めると

彼と通話中であることを表す画面が

スマートフォンに表示されていた

 

数時間だけ寝ちゃって

まだ明け方の5時くらいだと思ってたのに

もう朝の7時

 

どっぷりと眠りに浸っていた

 

 

せっかくの話せる時間なのに…

と思う反面

彼と電波を繋げたまま

ぐっすり眠っていた自分に

なんとも言えない幸福感を覚えた

 

 

今まで聞いたことのないような甘い声で

彼が私の名前を呼んだ

 

 

その甘さに釣られて

私の声も甘さを増した

 

 

電話越しでしかないのに

なんだか一緒に朝を迎えた気持ちになって

すこしだけ恥ずかしかった

 

 

寝起きの掠れた声で会話をし合う

 

彼が可愛いと言ってくれるのが嬉しくて

可愛いと思われるような言葉で喋る

 

 

通話時間の表記は9時間を越えようとしていた

 

 

 

彼が毎日のようにでろでろに甘やかしてくる

 

 

どうやらべた惚れらしい

 

 

 

私だって

好きで好きでしたかない

 

あのとき

私のものにしたくてたまらなかった人が

今私の全てになってる

 

 

 

たまらなく愛おしかった

 

 

 

まだあと30分繋いでていい?

 

 

そうは言ったものの結局お互い

安心しすぎているせいでうとうととしたまま

約束の時間がきた

 

 

切りたくない…

寂しい……

 

心の底からそう思った

 

 

ずーっと

ずっとこうしてたいのに…

 

 

なんでこんなに大好きなんだろう

 

 

 

 

今日会えるから

 

 

 

その言葉を胸の中の宝箱にそっとしまった

 

 

彼のことがどうしようもなく好きだし

自分のことがどうしようもなく愛おしい

 

 

 

早くあなたに会いたいな

 

 

 

アルコールと通話と君

 

 

 

 

君の声が聞けなくて寂しい日は

アルコールを体に流し込む

 

 

 

味はよく分からない

 

 

しゅわしゅわとした舌触りと

アルコールの匂い 

 

 

中学の頃に使ったアルコールランプと

同じ匂いがする

 

 

子どもの頃はこんな液体の何が美味しいか

わからなかった

 

毎日飲んでいる今でも

何が美味しいかわかってない

 

 

それでも

自分の気持ちに正直になれるから

アルコールが好きだ

 

 

 

今日は君と通話ができない

 

 

君には君の都合があるから

無理に通話したいなんて言わない

 

 

そういうのが亀裂を生む原因だって知ってるから

 

男らしくいたい彼をたてるため

私は常に1歩後ろを歩く

 

 

それでも全然窮屈じゃないし

彼に見合う女になるために

そのくらいの努力は苦ではなかった

 

 

ただやっぱり少し

いやかなり

寂しかったのかもしれない

 

 

彼とのトーク画面に

いつもなら使わない言葉を

躊躇なく飛ばした

 

寂しすぎて死んじゃう

 

そんな可愛い言葉で彼の気を引いた

 

 

 

 

「すこしだけ話せない?」

 

 

 

期待はしていたが

予想外ではあったその言葉に

同様と喜びを隠しきれなかった

 

 

 

電話が繋がり

彼が声をかけても

アルコールが回った頭は正常な会話ができず

ただへらへらと笑うことしかできなかった

 

 

 

 

勢いで彼が他の女に靡かないか聞いた

 

 

そんなわけない、俺のこと信用できない?

 

 

 

彼の切なそうな、でも芯のある言葉に

私はホッとした

 

俺にはお前しかいないから

 

 

そんな言葉をかけてほしいがために

誘導するように流した会話

 

 

 

私の面倒くさい会話にも

彼は可愛いと言って付き合ってくれた

 

 

 

実際会って飲んだらおかしくなっちゃいそう

でも早く一緒に飲みたいね

 

 

 

 

アルコールの美味しさは未だに分からない

 

それでも彼と楽しく話せるなら

私はアルコールを摂取する

 

 

いつか美味しいって思えるように